我がためと織女のそのやどに
織る白栲は織りてけむかも
- 歌の意味
-
私のためにと、織女がその家で織っている白い布は、もう織り上がっただろうか。
- 鑑賞
-
巻第十 秋雑歌 2027
詞書は前の歌に続き「七夕」
自分のために織女がその家で織っている白い布は、もう織り上がっただろうかと思いやる彦星の歌である。機織りの名手である織女が、夫のために布を織るという姿に、夫婦の情愛が描かれている。本巻の第二千十九首で織女が機も顧みず待ったと詠まれたのに対し、この歌は彦星のために布を織る織女を思いやっている。
作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。
初句「我がためと」は私のためにとの意である。
二句「織女の」は織女星のことで、字余りの句である。
三句「そのやどに」はその家での意である。
四句「織る白栲は」は織っている白い布はの意である。
結句「織りてけむかも」の「けむ」は過去推量、「かも」は詠嘆を含む疑問である。布が織り上がったかと思いやって結ぶ。
たなばたつめ:織女星。機を織る女性
しろたへ:白い布
- 作者
-
柿本人麻呂
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
白雲の五百重に隠り遠くとも 宵さらず見む妹があたりは
- 次の歌
-
君に逢はず久しき時ゆ織る服の 白栲衣垢付くまでに