- 歌の意味
-
天の川に楫の音が聞こえる。彦星と織女とが今夜逢うらしい。
- 鑑賞
-
巻第十 秋雑歌 2029
詞書は前の歌に続き「七夕」
天の川から聞こえる楫の音によって、彦星と織女が今夜逢うらしいと推し量る歌である。地上の人が音によって天上の逢瀬を知るという視点で、遠く離れた二星の恋を見守る温かさがある。本巻の第二千十五首で織女が聞いた楫の音を、この歌では地上の人が聞いており、同じ音を聞く者が替わっている。
作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。
初句「天の川」は二星を隔てる川である。
二句「楫の音聞こゆ」は楫の音が聞こえるの意で、ここで二句切れとなる。
三句「彦星と」は牽牛星とである。
四句「織女と」は織女星とで、字余りの句である。二星の名を並べている。
結句「今夜逢ふらしも」の「らし」は根拠ある推定、「も」は詠嘆である。楫の音を根拠に逢瀬を推し量って結ぶ。
かぢ:舟を漕ぐ道具。櫂や櫓
- 作者
-
柿本人麻呂
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
君に逢はず久しき時ゆ織る服の 白栲衣垢付くまでに
- 次の歌
-
秋されば川霧立てる天の川 川に向き居て恋ふる夜ぞ多き