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秋されば川霧立てる天の川
川に向き居て恋ふる夜ぞ多き

歌の意味
秋になると川霧の立ちこめる天の川、その川に向かって座り、恋しく思う夜が多いことだ。
鑑賞
巻第十 秋雑歌 2030

詞書は前の歌に続き「七夕」
 秋になって川霧の立つ天の川に向かい、恋しく思って過ごす夜が多いと嘆く歌である。逢瀬の季節である秋が来ても、逢える夜は一夜しかなく、川に向かって恋い続ける夜のほうがずっと多いという切なさが表れている。前歌の逢瀬の夜に対し、この歌は逢えない多くの夜を詠んでおり、一夜と多くの夜との対比が見られる。
 作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。

 初句「秋されば」は秋になるとの意である。
 二句「川霧立てる」の「る」は存続の「り」の連体形で、川霧の立ちこめるの意である。
 三句「天の川」は体言で、上の句の景を受け止めている。
 四句「川に向き居て」は川に向かって座っての意である。
 結句「恋ふる夜ぞ多き」の「ぞ」は強意の係助詞で、「多き」の連体形と係り結びをなす。字余りの句で、恋い続ける夜の多さを嘆いて結ぶ。

かはぎり:川に立つ霧
作者
柿本人麻呂
出典
万葉集
前の歌
天の川楫の音聞こゆ彦星と 織女と今夜逢ふらしも
次の歌
よしゑやし直ならずともぬえ鳥の うら嘆げ居りと告げむ子もがも