年にありて今か巻くらむぬばたまの
夜霧隠れる遠妻の手を
- 歌の意味
-
一年に一度の今夜、今ごろは枕にしているのだろうか。夜霧に隠れている遠い妻の手を。
- 鑑賞
-
巻第十 秋雑歌 2035
詞書は前の歌に続き「七夕」
年に一度の今夜、彦星は今ごろ夜霧に隠れた遠い妻の手を枕にしているのだろうかと思いやる歌である。地上の人が夜霧のかなたの二星の逢瀬を想像しており、見えない逢瀬への温かな思いやりが表れている。本巻の第二千二十一首の「遠妻と手枕交へて」と同じく、遠妻の手枕を詠んでいる。
初句「年にありて」は一年に一度の意とされ、字余りの句である。
二句「今か巻くらむ」の「か」は疑問の係助詞で、「らむ」の連体形と係り結びをなす。ここで二句切れとなる。
三句「ぬばたまの」は「夜」にかかる枕詞である。
四句「夜霧隠れる」は夜霧に隠れているの意である。
結句「遠妻の手を」は遠い妻の手をの意で、倒置によって枕にする対象を最後に示している。
まく:枕にする
とほづま:遠く離れて住む妻
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
織女の五百機立てて織る布の 秋さり衣誰れか取り見む
- 次の歌
-
我が待ちし秋は来りぬ妹と我れと 何事あれぞ紐解かずあらむ