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天の川八十瀬霧らへり彦星の
時待つ舟は今し漕ぐらし

歌の意味
天の川の多くの瀬に霧が立ちこめている。彦星の、その時を待っていた舟は、今まさに漕ぎ出したらしい。
鑑賞
巻第十 秋雑歌 2053

詞書は前の歌に続き「七夕」
 天の川の多くの瀬に霧が立ちこめるのを見て、時を待っていた彦星の舟が今漕ぎ出したらしいと推し量る歌である。霧を舟の出発の兆しとする点は、本巻の第二千四十五首と同じ趣向である。「時待つ舟」の語に、一年待ち続けた彦星の心が込められている。

 初句「天の川」は二星を隔てる川である。
 二句「八十瀬霧らへり」の「八十瀬」は多くの瀬、「霧らふ」は霧が立ちこめる意、「り」は存続である。ここで二句切れとなる。
 三句「彦星の」は牽牛星のの意である。
 四句「時待つ舟は」は逢瀬の時を待っていた舟はの意である。
 結句「今し漕ぐらし」の「し」は強意、「らし」は根拠ある推定である。霧を根拠に舟出を推し量って結ぶ。

やそせ:多くの瀬
きらふ:霧や雲が立ちこめる
出典
万葉集
前の歌
この夕降りくる雨は彦星の 早漕ぐ舟の櫂の散りかも
次の歌
風吹きて川波立ちぬ引き船に 渡りも来ませ夜の更けぬ間に