天の川なづさひ渡る君が手も
いまだまかねば夜の更けぬらく
- 歌の意味
-
天の川を水に浸りながら渡って来たあなたの手も、まだ枕にしていないのに、夜が更けてしまったことよ。
- 鑑賞
-
巻第十 秋雑歌 2071
詞書は前の歌に続き「七夕」
天の川を水に浸りながら苦労して渡って来た彦星の手を、まだ枕にもしないうちに夜が更けてしまったと嘆く織女の歌である。苦労して渡って来た相手との逢瀬の時間があまりに短いことへの嘆きが表れている。本巻の第二千六十首の、言葉も交わさぬうちに夜が明けたという彦星の嘆きと対応し、織女の側から同じ嘆きを詠んでいる。
初句「天の川」は二星を隔てる川である。
二句「なづさひ渡る」の「なづさふ」は水に浸りながら進む意である。
三句「君が手も」はあなたの手もの意である。
四句「いまだまかねば」の「まく」は枕にする意、「ね」は打ち消しの已然形で、まだ枕にしていないのにの意となる。
結句「夜の更けぬらく」の「らく」はク語法で、夜が更けてしまったことよの意となる。詠嘆をこめて結ぶ。
なづさふ:水に浸りながら進む
まく:枕にする
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
久方の天の川津に舟浮けて 君待つ夜らは明けずもあらぬか
- 次の歌
-
渡り守舟渡せをと呼ぶ声の 至らねばかも楫の音のせぬ