渡り守舟渡せをと呼ぶ声の
至らねばかも楫の音のせぬ
- 歌の意味
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渡し守よ、舟を渡せと呼ぶ声が届かないからだろうか、楫の音がしない。
- 鑑賞
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巻第十 秋雑歌 2072
詞書は前の歌に続き「七夕」
渡し守に舟を渡せと呼ぶ声が届かないのか、楫の音が聞こえないと気をもむ彦星の歌である。逢瀬を急ぐ心と、思うようにならないもどかしさが表れている。本巻の第二千六十七首などで楫の音によって恋人の到来を知ったのに対し、この歌は楫の音がしないことを嘆いており、同じ楫の音をめぐって反転した構図となっている。
初句「渡り守」は渡し場の舟の番人、渡し守の意である。
二句「舟渡せをと」の「を」は呼びかけの意を強める間投助詞で、舟を渡せよとの意である。
三句「呼ぶ声の」は呼ぶ声がの意である。
四句「至らねばかも」の「かも」は疑問の係助詞で、結句の「ぬ」と係り結びをなす。届かないからだろうかの意となる。
結句「楫の音のせぬ」の「ぬ」は打ち消しの「ず」の連体形で、四句の「かも」の結びである。楫の音のしないもどかしさを示して結ぶ。
わたりもり:渡し場の舟の番人
かぢ:舟を漕ぐ道具。櫂や櫓
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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天の川なづさひ渡る君が手も いまだまかねば夜の更けぬらく
- 次の歌
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ま日長く川に向き立ちありし袖 今夜巻かむと思はくがよさ