人さへや見継がずあらむ彦星の
妻呼ぶ舟の近づき行くを
- 歌の意味
-
人までもが見続けずにいられようか。彦星が妻を呼んで漕ぐ舟が近づいて行くのを。
- 鑑賞
-
巻第十 秋雑歌 2075
詞書は前の歌に続き「七夕」
彦星が妻を呼びながら漕ぐ舟が近づいて行くのを、地上の人々までもが見続けずにはいられないと詠んだ歌である。二星の逢瀬を地上から見守る人々の温かいまなざしが表れている。訓読には「一云 見つつあるらむ」の異伝が添えられ、四句以下を見続けていることだろうとする伝えもある。本巻の第二千二十九首などと同じく、地上の人が天上の逢瀬を見守る視点から詠まれている。
初句「人さへや」の「さへ」は添加で、人までもの意、「や」は反語の係助詞である。
二句「見継がずあらむ」の「見継ぐ」は見続ける意で、見続けずにいられようかの意となる。ここで二句切れとなる。
三句「彦星の」は牽牛星のの意である。
四句「妻呼ぶ舟の」は妻を呼ぶ舟のの意である。
結句「近づき行くを」は近づいて行くのをの意で、倒置によって見続ける対象を最後に示している。
みつぐ:見続ける
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
天の川渡り瀬ごとに思ひつつ 来しくもしるし逢へらく思へば
- 次の歌
-
天の川瀬を早みかもぬばたまの 夜は更けにつつ逢はぬ彦星