我が隠せる楫棹なくて渡り守
舟貸さめやもしましはあり待て
- 歌の意味
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私が隠した楫も棹もなくて、渡し守は舟を貸すだろうか、いや貸しはしない。しばらくはそのまま待っていてください。
- 鑑賞
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巻第十 秋雑歌 2088
詞書は前の歌に続き「七夕」
帰ろうとする彦星を引き留めるため、楫や棹を隠してしまったので渡し守も舟を貸さないだろう、しばらくはこのまま待っていてほしいと願う織女の歌である。別れを惜しむあまりの茶目っ気のある振る舞いに、ほほえましい情愛がにじんでいる。前歌で舟出しようとした彦星を、この歌では織女が引き留めており、二首は対をなしている。
初句「我が隠せる」は私が隠したの意で、字余りの句である。
二句「楫棹なくて」は楫も棹もなくての意である。
三句「渡り守」は渡し守で、前歌の初句と同じ語である。
四句「舟貸さめやも」の「めやも」は反語で、舟を貸すだろうか、いや貸さないの意である。ここで四句切れとなる。
結句「しましはあり待て」の「しまし」はしばらく、「あり待つ」はそのまま待つ意である。引き留める思いを示して結ぶ。
かぢさを:楫と棹
ありまつ:そのまま待ち続ける
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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渡り守舟出し出でむ今夜のみ 相見て後は逢はじものかも
- 次の歌
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高麗錦紐解きかはし天人の 妻問ふ宵ぞ我れも偲はむ