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雁がねの来鳴かむ日まで見つつあらむ
この萩原に雨な降りそね

歌の意味
雁が来て鳴く日まで見ていたいこの萩原に、雨よ、降らないでおくれ。
鑑賞
巻第十 秋雑歌 2097

詞書は前の歌に続き「花を詠む」
 雁が来て鳴く日まで眺めていたい萩原に、雨よ降らないでほしいと願う歌である。萩の盛りを雁の到来まで保ちたいという願いに、秋の景物を存分に味わいたい心が表れている。夏雑歌の第千九百七十首の「雨な降りそね」と同じ結句で、花を散らす雨に降るなと呼びかける趣向が季節を越えて繰り返されている。

 初句「雁がねの」の「雁がね」は雁の鳴き声、転じて雁そのものを指す。
 二句「来鳴かむ日まで」は来て鳴く日までの意である。萩と雁という秋の景物の取り合わせを示す。
 三句「見つつあらむ」の「む」は婉曲、意志を表し、見続けていたいの意である。字余りの句である。
 四句「この萩原に」はこの萩の原にの意である。
 結句「雨な降りそね」は「な…そ」で禁止、「ね」で願望を添える。第千九百七十首と同じ結句で、雨に降らないでくれと願って結ぶ。

かりがね:雁の鳴き声。転じて雁
はぎはら:萩の生い茂った原
出典
万葉集
前の歌
真葛原靡く秋風吹くごとに 阿太の大野の萩の花散る
次の歌
奥山に棲むといふ鹿の夕さらず 妻どふ萩の散らまく惜しも