古典和歌stream

春されば霞隠りて見えずありし
秋萩咲きぬ折りてかざさむ

歌の意味
春には霞に隠れて見えなかった秋萩が咲いた。折って髪に挿そう。
鑑賞
巻第十 秋雑歌 2105

詞書は前の歌に続き「花を詠む」
 春には霞に隠れて目立たなかった萩が、秋になって咲いたので、折って髪に挿そうと詠んだ歌である。春には見過ごされていた萩が秋に主役となる季節の移ろいが、霞と花の対比によって示されている。春雑歌の霞の一連に対し、秋の花の一連の中で霞が回想として詠まれており、巻の前半と後半の呼応が見られる。

 初句「春されば」は春になるとの意である。
 二句「霞隠りて」は霞に隠れての意である。
 三句「見えずありし」の「し」は過去の「き」の連体形で、見えなかったの意となる。字余りの句である。
 四句「秋萩咲きぬ」の「ぬ」は完了で、ここで四句切れとなる。
 結句「折りてかざさむ」の「かざす」は髪に挿す意、「む」は意志である。咲いた喜びを示して結ぶ。

かすみがくる:霞に隠れる
かざす:草木の花や枝を髪に挿す
出典
万葉集
前の歌
朝顔は朝露負ひて咲くといへど 夕影にこそ咲きまさりけれ
次の歌
沙額田の野辺の秋萩時なれば 今盛りなり折りてかざさむ