古典和歌stream

さを鹿の妻ととのふと鳴く声の
至らむ極み靡け萩原

歌の意味
雄鹿が妻を呼び寄せようと鳴く声の届く限り、なびけ、萩原よ。
鑑賞
巻第十 秋雑歌 2142

詞書は前の歌に続き「鹿鳴を詠む」
 雄鹿が妻を呼び寄せようと鳴く声の届く限り、萩原よなびけと命じる歌である。鹿の声の広がりと、それに応じてなびく萩原の広がりとが重なり、雄大な秋の野の景が描かれている。萩と鹿を夫婦に見立てる趣向を背景に、鹿の声に萩が応えるかのような構図となっている。

 初句「さを鹿の」は雄鹿のの意である。
 二句「妻ととのふと」の「ととのふ」は呼び寄せる、呼び集める意である。
 三句「鳴く声の」は鳴く声のの意である。
 四句「至らむ極み」は届くであろう限りの意である。
 結句「靡け萩原」は命令形による呼びかけで、萩原になびけと命じて結ぶ。

ととのふ:呼び寄せる。呼び集める
きはみ:極まるところ。限り
出典
万葉集
前の歌
このころの秋の朝明に霧隠り 妻呼ぶ鹿の声のさやけさ
次の歌
君に恋ひうらぶれ居れば敷の野の 秋萩しのぎさを鹿鳴くも