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雁は来ぬ萩は散りぬとさを鹿の
鳴くなる声もうらぶれにけり

歌の意味
雁はやって来た、萩は散ってしまったと、雄鹿の鳴く声までもしょんぼりと沈んでしまった。
鑑賞
巻第十 秋雑歌 2144

詞書は前の歌に続き「鹿鳴を詠む」
 雁が来て萩が散ったと、季節の移り変わりを嘆くように鳴く鹿の声までも沈んでしまったと詠んだ歌である。本巻の第二千百二十六首の、雁の声に萩が散る歌を受けるように、雁の到来と萩の散ることとを並べ、萩を妻とする鹿の悲しみを思いやっている。前歌の「うらぶれ」が作者の心であったのに対し、この歌では鹿の声がうらぶれており、人と鹿の心が重なっている。

 初句「雁は来ぬ」の「ぬ」は完了で、雁はやって来たの意である。
 二句「萩は散りぬと」は萩は散ってしまったとの意で、初句と対句的に並べられている。
 三句「さを鹿の」は雄鹿のの意である。
 四句「鳴くなる声も」の「なる」は伝聞推定の「なり」の連体形である。
 結句「うらぶれにけり」の「けり」は気づきの詠嘆である。前歌の二句と同じ「うらぶる」の語で結ぶ。

うらぶる:しょんぼりする。心が沈む
出典
万葉集
前の歌
君に恋ひうらぶれ居れば敷の野の 秋萩しのぎさを鹿鳴くも
次の歌
秋萩の恋も尽きねばさを鹿の 声い継ぎい継ぎ恋こそまされ