妹が手を取石の池の波の間ゆ
鳥が音異に鳴く秋過ぎぬらし
- 歌の意味
-
取石の池の波の間から、鳥の声がいつもと違って鳴いている。秋は過ぎてしまったらしい。
- 鑑賞
-
巻第十 秋雑歌 2166
詞書「鳥を詠む」
取石の池の波間から聞こえる鳥の声がいつもと違うのを聞いて、秋が過ぎてしまったらしいと推し量る歌で、題詞は「鳥を詠む」である。鳥の声の変化によって季節の深まりを知るという鋭い感覚が表れている。初句の「妹が手を」は恋人の手を取る意から「取石」を導く序で、秋の景に恋の情趣を添えている。
初句「妹が手を」は恋人の手を取る意から、次の「取石」の「取」を導く。
二句「取石の池の」の「取石の池」は和泉国(現在の大阪府高石市あたり)にあった池とされる。
三句「波の間ゆ」の「ゆ」は経由を表し、波の間からの意である。
四句「鳥が音異に鳴く」の「異に」はいつもと違っての意で、ここで四句切れとなる。
結句「秋過ぎぬらし」の「らし」は根拠ある推定である。鳥の声の変化を根拠に秋の過ぎたことを推し量って結ぶ。
とりがね:鳥の鳴き声
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
上つ瀬にかはづ妻呼ぶ夕されば 衣手寒み妻まかむとか
- 次の歌
-
秋の野の尾花が末に鳴くもずの 声聞きけむか片聞け我妹