秋田刈る苫手動くなり白露し
置く穂田なしと告げに来ぬらし
- 歌の意味
-
秋の田を刈る仮小屋の苫が動いているようだ。白露の置く穂田がもうないと知らせに来たらしい。
- 鑑賞
-
巻第十 秋雑歌 2176
詞書は前の歌に続き「露を詠む」
秋の田を刈る仮小屋の苫が動くのを、白露の置く稲穂の田がもうなくなったと知らせに来たのだろうと見立てた歌で、露の一連を締めくくる。刈り入れの終わりを、露が置く場所を失って知らせに来たとする擬人的な発想がおもしろい。訓読には結句に「一云 告げに来らしも」の異伝が添えられている。前歌に続き、露と農事とを結びつけている。
初句「秋田刈る」は第二千百七十四首と同じ初句である。
二句「苫手動くなり」の「苫」は菅や茅で編んだ覆い、「なり」は伝聞推定である。ここで二句切れとなる。
三句「白露し」の「し」は強意の副助詞である。
四句「置く穂田なしと」は置く穂の出た田がないとの意である。刈り入れが済んだことを示す。
結句「告げに来ぬらし」の「らし」は根拠ある推定である。露が知らせに来たと見立てて結ぶ。
とま:菅や茅を編んで作った覆い
ほだ:稲の穂の出た田
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
このころの秋風寒し萩の花 散らす白露置きにけらしも
- 次の歌
-
春は萌え夏は緑に紅の まだらに見ゆる秋の山かも