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朝露ににほひそめたる秋山に
しぐれな降りそありわたるがね

歌の意味
朝露に美しく色づき始めた秋の山に、しぐれよ、降らないでおくれ。このままずっとあり続けるように。
鑑賞
巻第十 秋雑歌 2179

詞書は前の歌に続き「黄葉を詠む」
 朝露に美しく色づき始めた秋の山に、紅葉がいつまでもあり続けるよう、しぐれに降らないでほしいと願う歌である。前歌と同じく「にほひそめ」の語で色づき始めた紅葉を詠み、前歌が散ることを惜しんだのに対し、この歌は散らさぬよう願っている。二首は人麻呂歌集に出る歌で、色づき始めの紅葉を惜しむ心が一対で詠まれている。
 作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。

 初句「朝露に」は朝露にあたっての意である。
 二句「にほひそめたる」は美しく色づき始めたの意で、前歌の四句と同じ語である。
 三句「秋山に」は秋の山にの意である。
 四句「しぐれな降りそ」は「な…そ」で禁止を表し、しぐれよ降るなの意である。ここで四句切れとなる。
 結句「ありわたるがね」の「ありわたる」はあり続ける意、「がね」は目的を表す終助詞で、あり続けるようにの意となる。

しぐれ:秋から冬にかけて降ったりやんだりする雨
ありわたる:あり続ける。そのまま過ごす
作者
柿本人麻呂
出典
万葉集
前の歌
妻ごもる矢野の神山露霜に にほひそめたり散らまく惜しも
次の歌
九月のしぐれの雨に濡れ通り 春日の山は色づきにけり