我妹子は衣にあらなむ秋風の
寒きこのころ下に着ましを
- 歌の意味
-
愛しい妻が衣であってほしい。秋風の寒いこのごろ、肌着として身につけていられるのに。
- 鑑賞
-
巻第十 秋相聞 2260
詞書「風に寄す」
秋風の寒いこのごろ、愛しい妻が衣であったなら肌着としていつも身につけていられるのにと願う歌で、題詞は「風に寄す」である。恋人と片時も離れずにいたいという思いを、衣になってほしいという大胆な願望で表している。秋雑歌の風の一連で詠まれた寒い秋風が、相聞では恋人との一体を願う心を引き出している。
初句「我妹子は」は男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語である。
二句「衣にあらなむ」の「なむ」は他に対する願望で、衣であってほしいの意である。ここで二句切れとなる。
三句「秋風の」は秋風がの意である。
四句「寒きこのころ」は寒いこのごろの意である。
結句「下に着ましを」の「下」は肌着、「まし」は反実仮想、「を」は詠嘆である。肌着として着られるのにと結ぶ。
わぎもこ:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
した:下に着るもの。肌着
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
秋萩の上に白露置くごとに 見つつぞ偲ふ君が姿を
- 次の歌
-
泊瀬風かく吹く宵はいつまでか 衣片敷き我がひとり寝む