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出でて去なば天飛ぶ雁の泣きぬべみ
今日今日と言ふに年ぞ経にける

歌の意味
家を出て行ってしまったら、空を飛ぶ雁のように泣いてしまいそうなので、今日こそ今日こそと言っているうちに、年が過ぎてしまった。
鑑賞
巻第十 秋相聞 2266

詞書「雁に寄す」
 旅立とうとしても、出て行けば雁のように泣いてしまいそうで、今日こそ今日こそと言いながら一年が過ぎてしまったと詠んだ歌で、題詞は「雁に寄す」である。別れのつらさゆえに旅立ちを延ばし続ける優柔不断な心と、恋人への深い愛着とが表れている。秋雑歌の雁の一連で鳴いて去る雁が、ここでは別れの涙の比喩となっている。

 初句「出でて去なば」の「な」は完了の「ぬ」の未然形、「ば」は仮定で、出て行ってしまったならばの意となる。字余りの句である。
 二句「天飛ぶ雁の」は空を飛ぶ雁のようにの意である。
 三句「泣きぬべみ」の「べみ」は「べし」の語幹に原因の「み」が付いた形で、泣いてしまいそうなのでの意となる。雁の「鳴き」と人の「泣き」を重ねている。字余りの句である。
 四句「今日今日と言ふに」は今日こそ今日こそと言っているうちにの意である。
 結句「年ぞ経にける」の「ぞ」は強意の係助詞で、「ける」の連体形と係り結びをなす。

いぬ:去る。行ってしまう
出典
万葉集
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朝霞鹿火屋が下に鳴くかはづ 声だに聞かば我れ恋ひめやも
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さを鹿の朝伏す小野の草若み 隠らひかねて人に知らゆな