降る雪の空に消ぬべく恋ふれども
逢ふよしなしに月ぞ経にける
- 歌の意味
-
降る雪が空で消えてしまうように、消え入りそうなほど恋い慕っているけれども、逢う手だてもないままに、月日が過ぎてしまった。
- 鑑賞
-
巻第十 冬相聞 2333
詞書「冬相聞」
降る雪が空中で消えるように消え入りそうなほど恋い慕っているのに、逢う手だてもないまま月日が過ぎてしまったと嘆く歌で、冬相聞の最初に置かれる。冬雑歌の第二千三百十七首で詠まれた空で消える雪が、相聞では消え入りそうな恋心の比喩となっている。人麻呂歌集に出る歌で、巻頭の春雑歌が人麻呂歌集の歌で始まったのと同じく、冬相聞も人麻呂歌集の歌で始まっている。
作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。
初句「降る雪の」は降る雪のようにの意である。
二句「空に消ぬべく」の「消」は消える意、「ぬべく」はきっと…しそうなの意で、上の句は消え入りそうな恋の比喩となっている。
三句「恋ふれども」の「ども」は逆接で、恋い慕っているけれどもの意となる。
四句「逢ふよしなしに」の「よし」は手だての意で、逢う手だてもないままにの意となる。
結句「月ぞ経にける」の「ぞ」は強意の係助詞で、「ける」の連体形と係り結びをなす。
く:消える
よし:手段。手だて
- 作者
-
柿本人麻呂
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
さ夜更けば出で来む月を高山の 嶺の白雲隠すらむかも
- 次の歌
-
沫雪は千重に降りしけ恋ひしくの 日長き我れは見つつ偲はむ