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一目見し人に恋ふらく天霧らし
降りくる雪の消ぬべく思ほゆ

歌の意味
ただ一目見ただけの人に恋い慕うことは、空を曇らせて降ってくる雪が消えるように、消え入りそうに思われる。
鑑賞
巻第十 冬相聞 2340

詞書は前の歌に続き「雪に寄す」
 ただ一目見ただけの人を恋い慕う思いは、空を曇らせて降る雪が消えるように、消え入りそうだと詠んだ歌である。一目見ただけの相手への激しい恋心が、はかない雪にたとえられている。次歌の第二千三百四十一首、第二千三百四十二首も「消ぬべく思ほゆ」の結句をもち、雪に寄せて消え入りそうな恋心を詠む類歌が続いている。

 初句「一目見し」の「し」は過去の「き」の連体形で、一目見たの意である。
 二句「人に恋ふらく」の「恋ふらく」は「恋ふ」のク語法で、人を恋い慕うことはの意となる。
 三句「天霧らし」は空を曇らせての意である。
 四句「降りくる雪の」は降ってくる雪のようにの意で、上の句は「消」を導く序となっている。
 結句「消ぬべく思ほゆ」は消え入りそうに思われるの意で、字余りの句である。

あまぎらす:空を曇らせる
こふらく:恋うこと。恋い慕うこと
出典
万葉集
前の歌
吉隠の野木に降り覆ふ白雪の いちしろくしも恋ひむ我れかも
次の歌
思ひ出づる時はすべなみ豊国の 由布山雪の消ぬべく思ほゆ