あしひきの山のあらしは吹かねども
君なき宵はかねて寒しも
- 歌の意味
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山の嵐は吹いていないけれども、あなたのいない夜は、前もって寒く感じられることだ。
- 鑑賞
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巻第十 冬相聞 2350
詞書「夜に寄す」
山の嵐が吹いているわけでもないのに、恋人のいない夜は前もって寒く感じられると詠んだ歌で、題詞は「夜に寄す」である。寒さの原因を嵐ではなく恋人の不在に求め、独り寝の寂しさが心の寒さとして表れている。巻第十の巻末を飾る歌であり、巻頭の第千八百十二首が霞のたなびく夕べに春の訪れを喜んだのに対し、この歌は冬の夜の寒さに恋人の不在を嘆いて閉じられており、春の夕べと冬の夜、喜びと寂しさとが巻頭と巻末で呼応している。
初句「あしひきの」は「山」にかかる枕詞である。
二句「山のあらしは」は山の嵐はの意である。
三句「吹かねども」の「ね」は打ち消しの已然形、「ども」は逆接で、吹いていないけれどもの意となる。
四句「君なき宵は」はあなたのいない夜はの意である。
結句「かねて寒しも」の「かねて」は前もって、「も」は詠嘆である。独り寝の寒さを嘆いて巻を結んでいる。
あらし:山から吹きおろす激しい風
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我が宿に咲きたる梅を月夜よみ 宵々見せむ君をこそ待て