恋ひしなば恋ひも死ねとや玉桙の
道行く人の言も告げなく
- 歌の意味
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恋い死にするのなら恋い死んでしまえというのだろうか。道を行く人が、あの人からの言伝ても告げてくれない。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2370
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
恋い死にするなら死んでしまえというのか、と嘆き、道を行く人も恋しい人の便りを伝えてくれないことを恨んだ歌である。音信の途絶えた相手への恨めしさと、恋に死ぬほど思い詰めた心とが、問いかけの強い調子で述べられている。
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」である。万葉集巻第十一のこの一群では、「玉桙の道」の語が本巻の第二千三百八十首にも見え、本歌では便りを運ぶ道として、第二千三百八十首では恋人が通うはずの道として詠まれている。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「恋ひしなば」は、恋い死にするのならば、の意である。「なば」は完了の助動詞「ぬ」の未然形に接続助詞「ば」が付いた仮定の形である。
二句「恋ひも死ねとや」は、恋い死にしてしまえというのか、の意である。「死ね」は命令形で、係助詞「や」は疑問を表す。ここで句切れとなり、二句切れの歌である。
三句「玉桙の」は「道」にかかる枕詞である。玉で飾った桙を立てた道の意とする説などがある。
四句「道行く人の」は、道を通っていく人、の意である。人の行き来する道を通じて、恋人の言葉が届くことを期待していたのである。
結句「言も告げなく」の「言」は言葉、ここでは恋人からの言伝てをいう。「告げなく」は打消の助動詞「ず」のク語法で、告げてくれないことよ、と詠嘆を込めて言いさしている。
こと:言葉、ここでは恋人からの言伝て
たまほこ:「たまほこの」の形で「道」にかかる枕詞
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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人の寝る味寐は寝ずてはしきやし 君が目すらを欲りし嘆かむ
- 次の歌
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心には千重に思へど人に言はぬ 我が恋妻を見むよしもがも