よしゑやし来まさぬ君を何せむに
いとはず我れは恋ひつつ居らむ
- 歌の意味
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ええ、ままよ。おいでにならないあなたを、どうして私は嫌いもせずに恋い続けていようか。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2378
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
いくら待っても訪れて来ない相手を、どうして嫌いもせずに恋い続けていられようか、もう思い切ろう、と自分に言い聞かせる歌である。訪れのない恋人への恨みと、それでもなお断ち切れない思いとの間で揺れる心が表れている。
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」である。前歌と同じ「何せむに」を用い、前歌の男の嘆きに続けて、来ない男を待つ女の立場の歌が置かれている。「来まさぬ君」は本巻の第二千三百八十首の結句「君が来まさぬ」とも対応し、次歌の第二千三百七十九首とも「恋ひつつ」の語を共有している。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「よしゑやし」は、ええままよ、どうなろうと、の意の感動の語である。思い切ろうとする投げやりな気持ちを冒頭で示している。
二句「来まさぬ君を」は、おいでにならないあなたを、の意である。「来ます」は「来」の尊敬語で、打消の助動詞「ず」の連体形が付いている。
三句「何せむに」は、どうして、の意である。前歌の初句と同じ句で、ここでは結句の「む」と呼応して反語を表している。
四句「いとはず我れは」は、嫌いもしないで私は、の意である。「いとふ」は嫌って避けることで、それをしないことを打消の「ず」で表している。
結句「恋ひつつ居らむ」は、恋い続けていようか、いや、そうはしない、の意である。助動詞「む」は三句の「何せむに」を受けて反語となり、「つつ」は動作の継続を表す。
いとふ:嫌って避ける、厭う
きます:「来」の尊敬語、おいでになる
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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何せむに命継ぎけむ我妹子に 恋ひぬ前にも死なましものを
- 次の歌
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見わたせば近き渡りをた廻り 今か来ますと恋ひつつぞ居る