立ちて居てたづきも知らず思へども
妹に告げねば間使も来ず
- 歌の意味
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立っても座っても、どうしてよいかわからないほど思っているけれども、妹に告げていないので、二人の間を行き来する使いも来ない。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2388
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
立っても座っても落ち着かず、どうしようもなく恋い慕っているのに、その思いを相手に告げていないので、使いの者が来るはずもないと嘆いた恋の歌である。思いを打ち明けられない自分のふがいなさと、相手からの便りを待つもどかしさとが、一首の中に率直に言い表されている。
本歌は「正に心緒を述ぶ」の部立に属し、物にことよせず胸の内をそのまま述べている。漢字原文は「立座態不知雖念妹不告間使不来」のように助詞や助動詞をほとんど書き表さない、いわゆる略体の表記で記されており、人麻呂歌集の歌の特色をよく示している。左注の「以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出」は、ここまでの百四十九首が人麻呂歌集から出たことを記したものである。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「立ちて居て」は、立ったり座ったりして、の意である。じっとしていられない落ち着かなさを、身のこなしで表している。
二句「たづきも知らず」は、手立てもわからず、の意である。係助詞「も」が添えられ、どうしてよいかまったくわからない心の乱れを強めている。
三句「思へども」は、恋い思っているけれども、の意である。逆接の接続助詞「ども」によって、思いの深さと、それが相手に届かない現実とをつないでいる。
四句「妹に告げねば」は、妹に告げていないので、の意である。「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形で、「ば」が付いて確定条件を表す。思いを伝えていない自分の側に原因があることを認めている。
結句「間使も来ず」は、二人の間を行き来する使いも来ない、の意である。打消の「ず」で言い切って一首を結び、来ない使いを待つ寂しさが余韻として残る。
たづき:物事をする手がかり、手段
いも:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
まつかひ:二人の間を行き来して便りを伝える使い
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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日並べば人知りぬべし今日の日は 千年のごともありこせぬかも
- 次の歌
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ぬばたまのこの夜な明けそ赤らひく 朝行く君を待たば苦しも