たまさかに我が見し人をいかならむ
よしをもちてかまた一目見む
- 歌の意味
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たまたま私が見かけた人を、どのような手立てによって、もう一度ひと目見ることができるだろうか。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2396
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
偶然に一度だけ見かけた人を、どうにかしてもう一度ひと目だけでも見たいと願った歌である。手立ても見つからないまま、ただ再び会いたいと思い続ける素朴な恋心が表れている。
漢字原文では「たまさか」を「玉坂」と書き、音を借りた表記となっている。前々歌の「ほのかに見えて去にし子」と同じく、わずかに見た相手への思いを詠んだ歌が続いている。「よし」の語は、本巻の第二千四百二首の「逢ふよしなしに」にも見え、恋の手立てのなさを嘆く点で通じ合う。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「たまさかに」は、偶然に、たまたま、の意である。思いがけない出会いであったことを示している。
二句「我が見し人を」は、私が見かけた人を、の意である。過去の助動詞「き」の連体形「し」により、すでに過ぎた一度の出会いであることを表している。
三句「いかならむ」は、どのような、の意である。推量の助動詞「む」を含み、手立ての見当がつかない思いを表している。
四句「よしをもちてか」は、手立てによって、の意である。係助詞「か」は疑問を表し、結句の「む」と係り結びをなしている。
結句「また一目見む」は、もう一度ひと目見ることができようか、の意である。四句の係助詞「か」を受けて、推量の助動詞「む」の連体形で結んでいる。「一目」に、ほんのわずかでもという切ない願いがこもる。
よし:手段、方法、手立て
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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行き行きて逢はぬ妹ゆゑひさかたの 天露霜に濡れにけるかも
- 次の歌
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しましくも見ぬば恋ほしき我妹子を 日に日に来れば言の繁けく