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たまきはる世までと定め頼みたる
君によりてし言の繁けく

歌の意味
命のある限りの世までと心に定めて頼りにしているあなたのことで、人の噂がうるさいことだ。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2398

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 一生を共にと心に決めて頼みにしている相手のことで、世間の噂がしきりに立つと嘆いた女の歌である。噂をつらく思いながらも、相手への信頼は揺るがないという気持ちがうかがえる。
 前歌と同じく結句を「言の繁けく」とし、二首は同じ句で結ばれている。前歌が毎日通う男の立場から噂を嘆いたのに対し、本歌は頼みとする君のために噂が立つと女の立場から詠んでおり、男女が応じ合うような対をなしている。
 作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。

 初句「たまきはる」は「世」にかかる枕詞である。「命」「内」などにもかかり、ここでは命ある限りの一生を思わせる。
 二句「世までと定め」は、一生の間までと心に定めて、の意である。生涯を共にしようと固く決めた思いを表している。
 三句「頼みたる」は、頼りにしている、の意である。存続の助動詞「たり」の連体形で、四句の「君」を修飾している。
 四句「君によりてし」は、あなたによって、あなたのことで、の意である。「し」は強意の副助詞で、噂の原因が相手であることを強めている。
 結句「言の繁けく」は、噂がうるさいことよ、の意である。「繁けく」は「繁し」のク語法で、詠嘆をこめて言いさして結んでいる。前歌の結句と同じ句である。

たまきはる:「命」「世」「内」などにかかる枕詞
こと:人のうわさ、評判
作者
柿本人麻呂歌集
出典
万葉集
前の歌
しましくも見ぬば恋ほしき我妹子を 日に日に来れば言の繁けく
次の歌
赤らひく肌も触れずて寐ぬれども 心を異には我が思はなくに