赤らひく肌も触れずて寐ぬれども
心を異には我が思はなくに
- 歌の意味
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赤みを帯びた肌にも触れずに寝たけれども、心を他に移そうなどとは、私は思っていないのに。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2399
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
共寝をしながらも相手の肌に触れずに夜を過ごしたが、それは心変わりしたからではないと、自分の真心を訴えた歌である。触れずに寝たことを相手に疑われるのを恐れ、変わらぬ思いを打ち明けている。
「赤らひく」は本巻の第二千三百八十九首では「朝」にかかっていたが、本歌では「肌」にかかり、血色のよい若々しい肌を思わせる。前歌までの噂を嘆く歌に続き、本歌も相手に対する心の誠を言い立てる形をとっている。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「赤らひく」は「肌」にかかる枕詞である。赤みを帯びて輝く意で、若々しく血色のよい肌を言い起こしている。
二句「肌も触れずて」は、肌にも触れないで、の意である。「ずて」は打消の「ず」に接続助詞「て」が付いた形で、触れずにいた様子を表している。
三句「寐ぬれども」は、寝たけれども、の意である。「寐」は眠りのことで、「寝」は寝る意の動詞である。逆接の「ども」によって下の句の弁明へと続けている。
四句「心を異には」は、心を他に、別の人にとは、の意である。係助詞「は」によって、心変わりということを取り立てて打ち消している。
結句「我が思はなくに」は、私は思っていないのに、の意である。「なくに」は打消の「ず」のク語法に「に」が付いた形で、相手への訴えをこめて結んでいる。
い:眠り、「寐を寝」「寐ぬ」の形で用いる
け:異なること、ほか
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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たまきはる世までと定め頼みたる 君によりてし言の繁けく
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いで何かここだはなはだ利心の 失するまで思ふ恋ゆゑにこそ