白栲の袖をはつはつ見しからに
かかる恋をも我れはするかも
- 歌の意味
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白い袖をほんのわずかに見ただけで、このような恋を私はすることだなあ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2411
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
相手の白い袖をほんの少し見ただけなのに、これほどの恋をすることになったと、自分でも驚くように詠んだ歌である。きっかけのささやかさと恋の深さとの落差によって、思いがけず恋に落ちた心を率直に表している。
前歌の第二千四百十首が袖を交わした後の思いを詠むのに対し、本歌は袖をわずかに見ただけの恋の始まりを詠んでおり、同じ「袖」を通して恋の始まりと深まりとが対照的に並んでいる。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「白栲の」は「袖」にかかる枕詞である。白栲は楮などの繊維で織った白い布をいう。
二句「袖をはつはつ」は、袖をほんのわずかに、の意である。「はつはつ」はわずかに、ちらりとの意を表す。
三句「見しからに」は、見ただけで、の意である。「からに」はそれだけのことで、という意を表し、きっかけのささやかさを強調している。
四句「かかる恋をも」は、このような恋までも、の意である。係助詞「も」が添えられ、思いがけない恋の深さを示している。
結句「我れはするかも」は、私はすることだなあ、の意である。終助詞「かも」が詠嘆を表し、自分の恋に驚く気持ちをこめて言い終えている。
しろたへ:楮などの繊維で織った白い布。「しろたへの」の形で「袖」「衣」などにかかる枕詞となる
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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あらたまの年は果つれど敷栲の 袖交へし子を忘れて思へや
- 次の歌
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我妹子に恋ひすべながり夢に見むと 我れは思へど寐ねらえなくに