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我妹子に恋ひすべながり夢に見むと
我れは思へど寐ねらえなくに

歌の意味
いとしい妻を恋しく思ってどうしようもなく、せめて夢に見ようと私は思うけれども、眠ることができないのだ。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2412

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 恋しさのあまりどうしようもなく、せめて夢の中で逢おうと思うのに、その思いのために眠ることさえできないと嘆いた歌である。現実に逢えない恋人に夢で逢うという古代の恋の慰めすら得られない、恋の苦しさの極みを率直に述べている。
 万葉集では、夢に恋人を見ることが恋の大きな慰めとして多く詠まれている。本巻の第二千四百十八首も「夢にだに見む」と夢での逢瀬を願っており、夢をめぐる歌が近くに置かれている。
 作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。

 初句「我妹子に」は、いとしい妻に、の意である。「我妹子」は男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語で、「に」は恋う対象を示す。
 二句「恋ひすべながり」は、恋しくてどうしようもなく思い、の意である。「すべながる」は手立てがないと思う意の動詞である。
 三句「夢に見むと」は、夢に見ようと、の意である。六音の字余りの句で、助動詞「む」が意志を表している。
 四句「我れは思へど」は、私は思うけれども、の意である。逆接の助詞「ど」によって、願いがかなわない結句へと転じている。
 結句「寐ねらえなくに」は、眠ることができないのに、の意である。「寐ぬ」に可能の助動詞「らゆ」、打消の「ず」のク語法「なく」、助詞「に」が付いた形で、詠嘆をこめて言い終えている。

わぎもこ:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
いめ:夢
いぬ:眠る、寝る
作者
柿本人麻呂歌集
出典
万葉集
前の歌
白栲の袖をはつはつ見しからに かかる恋をも我れはするかも
次の歌
故もなく我が下紐を解けしめて 人にな知らせ直に逢ふまでに