ちはやぶる神の持たせる命をば
誰がためにかも長く欲りせむ
- 歌の意味
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神がお持ちになっている命を、いったい誰のために長くあってほしいと願うだろうか。あなたのためにほかならない。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2416
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
人の命は神の手にゆだねられているが、その命を長くあってほしいと願うのは、ほかならぬあなたのためであると詠んだ歌である。命の長さを願う理由を恋人に結びつけ、恋人と生きていたいという切実な思いを、反語の形で強く訴えている。
寄物陳思の歌群のはじめに並ぶ神にかかわる歌の一首で、神に寄せて思いを述べている。前歌の第二千四百十五首が神域の瑞垣に寄せて恋の久しさを詠むのに対し、本歌は神が握る命の長さに寄せており、時の長さという点で前歌と響き合っている。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「ちはやぶる」は「神」にかかる枕詞である。勢いが激しく荒々しい意を表す。
二句「神の持たせる」は、神がお持ちになっている、の意である。「持たせる」は「持つ」に尊敬の助動詞「す」と存続の助動詞「り」が付いた形で、人の命が神の支配のもとにあるという古代の考えを示している。
三句「命をば」は、命を、の意である。「をば」は格助詞「を」に係助詞「は」が付いて濁音化したもので、「命」を強く取り立てている。
四句「誰がためにかも」は、誰のためにか、の意である。係助詞「か」に「も」が添えられ、結句の「む」と係り結びをなして反語を表す。
結句「長く欲りせむ」は、長くあってほしいと願うだろうか、の意である。四句の係助詞「か」を受けて連体形「む」で結び、あなたのためにほかならないという反語の意を表している。
ほりす:欲しいと願う、望む
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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娘子らを袖振る山の瑞垣の 久しき時ゆ思ひけり我れは
- 次の歌
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石上布留の神杉神さぶる 恋をも我れはさらにするかも