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道の後深津島山しましくも
君が目見ねば苦しかりけり

歌の意味
備後の深津島山の名のように、しばらくの間でも、あなたに逢わないでいると苦しいことだ。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2423

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 ほんのしばらくの間でも、あなたに逢わずにいると苦しいと詠んだ歌である。上の句に備後の地名を置き、その「島」の音から「しましく」を導いて、短い別れにも耐えられない恋の思いを表している。旅の途上で目にした土地の名を恋の思いに結びつけたものとも考えられる。
 山に寄せて思いを述べる歌で、前の第二千四百二十一首、第二千四百二十二首に続いて山を詠んでいる。
 作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。

 初句「道の後」は、吉備の国を分けた道の後、すなわち備後の国をいう。
 二句「深津島山」は、備後の深津(広島県福山市)にある島山をいう。初句からこの句までが序詞で、「島」と「しまし」の音の重なりによって三句の「しましくも」を導いている。
 三句「しましくも」は、しばらくの間でも、の意である。序詞から音によって転じて、ここから心情を述べる本旨に入っている。
 四句「君が目見ねば」は、あなたに逢わないでいると、の意である。「目見る」は顔を見る、逢うの意で、「ねば」は打消の確定条件を表す。
 結句「苦しかりけり」は、苦しいことだ、の意である。助動詞「けり」が、改めて気づいた詠嘆を表している。

みちのしり:都から遠い方の地域。ここでは吉備の国を分けた備後の国をいう
しましく:しばらくの間
作者
柿本人麻呂歌集
出典
万葉集
前の歌
岩根踏みへなれる山はあらねども 逢はぬ日まねみ恋ひわたるかも
次の歌
紐鏡能登香の山も誰がゆゑか 君来ませるに紐解かず寝む