近江の海沈く白玉知らずして
恋ひせしよりは今こそまされ
- 歌の意味
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近江の海に沈んでいる白玉ではないが、よく知らないままに恋していた頃よりも、今の方こそ恋しさがまさっている。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2445
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
相手をよく知らずに恋していた頃よりも、逢って知った今の方がいっそう恋しさがまさると詠んだ歌である。近江の海の底に沈む白玉を序とし、白玉を思わせる美しい恋人への思いが深まっていくさまを表している。
「近江の海」で始まる歌は本巻の第二千四百三十五首、第二千四百三十九首、第二千四百四十首にも見え、とくに第二千四百三十五首は「白波」から、本歌は「白玉」から、同じ音によって「知らず」を導く趣向が共通している。また本歌の「白玉」は、次歌の第二千四百四十六首、第二千四百四十七首へと続く白玉の歌の始まりとなっている。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「近江の海」は琵琶湖のことである。六音の字余りとなっている。
二句「沈く白玉」は、水底に沈んでいる白玉、の意である。初句からここまでが序詞で、「白(しら)」の同じ音で三句の「知らず」を導いている。
三句「知らずして」は、知らないままで、の意である。相手をよく知らない、まだ逢う前の頃をいう。
四句「恋ひせしよりは」は、恋していた時よりは、の意である。過去の助動詞「き」の連体形「し」が、以前の恋を振り返る気持ちを表している。
結句「今こそまされ」は、今の方こそまさっている、の意である。係助詞「こそ」を受けて動詞「まさる」の已然形「まされ」で結ぶ係り結びとなっている。
しづく:水の底に沈んでいる
しらたま:白い玉。真珠のこと
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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白真弓石辺の山の常磐なる 命なれやも恋ひつつ居らむ
- 次の歌
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白玉を巻きてぞ持てる今よりは 我が玉にせむ知れる時だに