港にさ根延ふ小菅ぬすまはず
君に恋ひつつありかてぬかも
- 歌の意味
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港にしっかりと根を延ばしている小菅のように、人目を忍んで隠すこともせず、あなたを恋い続けて、じっとしてはいられないことだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2470
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
人目を忍んで隠すこともできず、あなたを恋い続けて、じっとしていられないと、抑えきれない恋心を詠んだ歌である。水辺に根を張って隠れようもなく生い茂る小菅に、隠しきれない思いを寄せている。
物に寄せて思ひを陳ぶ歌の一首で、菅に寄せた恋の歌である。ここから本巻の第二千四百七十七首まで、小菅、巌菅、菅の根、山菅と、菅に寄せる歌が続く。前歌が露にしおれる山ぢさであったのに対し、本歌は根を張る小菅であり、水辺の草に寄せた点では第二千四百六十八首とも通じている。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「港に」は、河口や水の出入りする所に、の意である。四音の字足らずの句である。
二句「さ根延ふ小菅」は、しっかりと根を延ばしている菅の意である。「さ」「小」はともに接頭語である。初句からここまでが序詞で、根を張って露わに生える小菅のさまから次の「ぬすまはず」を導くとされるが、そのつながり方には諸説がある。
三句「ぬすまはず」は、人目を盗むことをせず、の意である。「ぬすまふ」は人目を忍んで隠す意の動詞で、「ず」は打消の助動詞である。
四句「君に恋ひつつ」は、あなたを恋い続けて、の意である。「つつ」は動作の継続を表す助詞である。
結句「ありかてぬかも」は、じっとしてはいられないことだ、の意である。「かて」は堪えられる意の「かつ」、「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形で、「かも」が詠嘆を添えている。
さねばふ:根をしっかりと延ばす
こすげ:菅。「こ」は接頭語
ぬすまふ:人目を盗む、人目を忍んで隠す
ありかつ:そのままの状態で堪えている
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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山ぢさの白露重みうらぶれて 心も深く我が恋やまず
- 次の歌
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山背の泉の小菅なみなみに 妹が心を我が思はなくに