打つ田には稗はしあまたありといへど
選えし我れぞ夜をひとり寝る
- 歌の意味
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耕す田には稗はたくさんあるというのに、選り分けられて捨てられた私は、夜をひとりで寝ることだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2476
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
耕した田には稗がたくさん生えて残っているのに、自分だけが選り分けられて捨てられ、夜をひとりで寝ていると嘆いた歌である。田の稗に自分をなぞらえ、恋人に見捨てられた身のわびしさを自嘲を込めて詠んでいる。
物に寄せて思ひを陳ぶ歌の一首で、稗に寄せた恋の歌である。前歌の忘れ草や軒のしだ草に続き、田の稗という暮らしに身近な植物を取り上げており、農作業を知る人々の感覚が生かされている。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「打つ田には」は、鍬で打ち耕す田には、の意である。係助詞「は」で田を取り立てている。
二句「稗はしあまた」は、稗はたくさん、の意である。稗は田では雑草として抜き取られるものであった。「し」は強意の助詞である。
三句「ありといへど」は、あるというけれども、の意である。「ど」は逆接の助詞で、抜かれずに残る稗の多さと自分の身とを対比している。字余りの句である。
四句「選えし我れぞ」は、選り分けられた私は、の意である。「え」は受身の助動詞「ゆ」の連用形、「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、係助詞「ぞ」が結句の結びを導いている。
結句「夜をひとり寝る」は、夜をひとりで寝ることだ、の意である。四句の「ぞ」を受けて「寝る」と連体形で結ぶ係り結びで、ひとり寝のわびしさを強めている。
うつ:田畑を鍬で掘り返して耕す
ひえ:イネ科の植物。田では雑草として抜き取られた
える:選び分ける、選り分ける
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我が宿の軒にしだ草生ひたれど 恋忘れ草見れどいまだ生ひず
- 次の歌
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あしひきの名負ふ山菅押し伏せて 君し結ばば逢はずあらめやも