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秋柏潤和川辺の小竹の芽の
人には忍び君に堪へなくに

歌の意味
潤和川の川辺の篠の芽ではないが、人には思いを忍んで隠しているけれど、あなたへの思いには堪えきれないことだ。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2478

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 他人には恋心を忍んで隠しているが、あなたへの思いにはもう堪えきれないと、抑えてきた恋があふれ出そうになる心を詠んだ歌である。川辺の篠の芽の「しの」から「忍び」を言い起こし、人目を忍ぶ恋の苦しさを訴えている。
 物に寄せて思ひを陳ぶ歌の一首で、篠竹に寄せた恋の歌である。四句「人には忍び」と結句「君に堪へなくに」とが、人と君、忍ぶことと堪えられないこととを対にして並べており、隠す心とあふれる思いとの葛藤がよく表れている。本巻の第二千四百七十首が人目を忍ばない恋を詠んだのに対し、本歌は人目を忍ぶ恋を詠んでいる。
 作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。

 初句「秋柏」は、「潤和」にかかる枕詞である。秋の柏の葉が露にうるおうことからかかるとされるが、かかり方には諸説がある。
 二句「潤和川辺の」は、潤和川の川辺の、の意である。潤和川の所在は未詳である。
 三句「小竹の芽の」は、篠竹の芽の、の意である。初句からここまでが序詞で、「しの」の音を重ねて次の「忍び」を導いている。
 四句「人には忍び」は、他人に対しては思いを隠して、の意である。係助詞「は」によって、他人と結句の「君」とを区別している。
 結句「君に堪へなくに」は、あなたへの思いには堪えられないのに、の意である。「なくに」は打消の助動詞「ず」のク語法に助詞「に」が付いた形で、詠嘆を込めて言い終えている。

しの:細い竹、篠竹
しのぶ:人目を避けて隠す、こらえる
あふ:堪える、こらえる
作者
柿本人麻呂歌集
出典
万葉集
前の歌
あしひきの名負ふ山菅押し伏せて 君し結ばば逢はずあらめやも
次の歌
さね葛後も逢はむと夢のみに うけひわたりて年は経につつ