敷栲の衣手離れて玉藻なす
靡きか寝らむ我を待ちかてに
- 歌の意味
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私の袖から離れて、玉藻のように身をなびかせて寝ているのだろうか。私を待ちかねて。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2483
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
共寝の袖を交わすこともなく、あの人は玉藻のように黒髪をなびかせてひとり寝ているのだろうか、私を待ちかねて、と離れている恋人の姿を思いやった歌である。逢えない夜に、相手のさびしい寝姿を思い描く心が詠まれている。
物に寄せて思ひを陳ぶ歌の一首で、前歌に続いて玉藻に寄せた歌である。前歌が自分の心を玉藻のなびきにたとえたのに対し、本歌は相手の寝姿をたとえており、同じ玉藻を自分と相手との両側から詠んだ対となっている。結句「我を待ちかてに」は、次歌の「君を待ち出でむ」と、待つ心を詠む点で通じている。
左注によれば人麻呂歌集の歌であり、本歌は助詞などを表記した、いわゆる非略体の書き方で記されている。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「敷栲の」は、寝床に敷く布の意で、「衣手」にかかる枕詞である。
二句「衣手離れて」は、私の袖から離れて、の意である。共寝の袖を交わさずにいることをいう。
三句「玉藻なす」は、玉藻のように、の意である。「なす」は、のように、の意を表す接尾語である。
四句「靡きか寝らむ」は、身をなびかせて寝ているのだろうか、の意である。係助詞「か」を受けて現在推量の助動詞「らむ」が連体形で結ぶ係り結びで、ここで句切れとなる。
結句「我を待ちかてに」は、私を待ちかねて、の意である。「かてに」は堪えきれずに、の意で、倒置によって相手の待つ心を最後に示している。
しきたへ:寝床に敷く布。「しきたへの」の形で「衣手」「枕」などにかかる枕詞となる
ころもで:袖
かる:離れる、遠ざかる
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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水底に生ふる玉藻のうち靡き 心は寄りて恋ふるこのころ
- 次の歌
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君来ずは形見にせむと我がふたり 植ゑし松の木君を待ち出でむ