君来ずは形見にせむと我がふたり
植ゑし松の木君を待ち出でむ
- 歌の意味
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あなたが来ないときは形見にしようと、私たち二人で植えた松の木は、あなたを待ち続けて、迎えることだろう。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2484
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
あなたが来ないときの形見にしようと二人で植えた松の木が、あなたを待ち続け、やがて迎えることだろうと詠んだ歌である。松に「待つ」の意を響かせ、二人の思い出の木に再会を待つ心を託している。
物に寄せて思ひを陳ぶ歌の一首で、松に寄せた恋の歌である。ここから本巻の第二千四百八十七首まで、松に寄せる歌が続く。前歌の結句「我を待ちかてに」と本歌の「君を待ち出でむ」とは、待つ側の心を詠む点で通じ合っている。
左注によれば人麻呂歌集の歌であり、本歌は助詞などを表記した、いわゆる非略体の書き方で記されている。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「君来ずは」は、あなたが来ないならば、の意である。「ずは」は打消の助動詞「ず」に係助詞「は」が付いた形で、仮定の意を表す。
二句「形見にせむと」は、形見にしようと、の意である。「む」は意志の助動詞である。
三句「我がふたり」は、私たち二人で、の意である。二人で松を植えた日の思い出を示している。
四句「植ゑし松の木」は、植えた松の木、の意である。「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。「松」には「待つ」の意が響いており、結句の「待ち」へとつながっている。
結句「君を待ち出でむ」は、あなたを待ち続けて迎えるだろう、の意である。「待ち出づ」は待っていて出会う意で、「む」は推量の助動詞である。八音の字余りの句である。
かたみ:その人を思い出すよりどころとなるもの
まちいづ:待っていて、ついに出会う
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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敷栲の衣手離れて玉藻なす 靡きか寝らむ我を待ちかてに
- 次の歌
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袖振らば見ゆべき限り我れはあれど その松が枝に隠らひにけり