礒の上に立てるむろの木ねもころに
何しか深め思ひそめけむ
- 歌の意味
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磯の上に立っているむろの木の根のように、ねんごろに、どうしてこれほど深く思いはじめてしまったのだろう。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2488
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
磯の岩の上に根を張って立つむろの木に寄せて、どうしてこれほど深く人を思いはじめてしまったのかと、自らの恋の深さをいぶかしむ歌である。抜き差しならなくなった思いを、責めるような問いの形で振り返っている。
むろの木の根から「ねもころ」を導き、「深め」と重ねて思いの深さを表している。本巻の第二千四百八十六首にも「根深めて」とあり、その或本歌には「ねもころに」とあって、根に寄せて恋の深さを言う歌が続いている。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「礒の上に」は、海辺の岩の上に、の意である。風雨にさらされる磯の景を歌い出している。
二句「立てるむろの木」は、立っているむろの木、の意である。むろの木は海辺に生える常緑の木で、ネズ(杜松)のこととされる。初句からこの句までが序詞で、根を張る木のさまから三句の「ねもころに」を導いている。
三句「ねもころに」は、心をこめて、ねんごろに、の意である。根が細かに絡み合うさまに通じる語で、序詞との結びつきが自然である。
四句「何しか深め」は、どうして深く、の意である。「何しか」の「か」は疑問の係助詞で、結句の「けむ」と係り結びをなす。
結句「思ひそめけむ」は、思いはじめてしまったのだろう、の意である。過去推量の助動詞「けむ」の連体形で四句の「か」を受けて結び、恋の始まりを振り返っていぶかしむ気持ちを表している。
むろのき:海辺などに生える常緑樹で、ネズ(杜松)のこととされる
ねもころ:心をこめて丁寧なさま、ねんごろ
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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奈良山の小松が末のうれむぞは 我が思ふ妹に逢はずやみなむ
- 次の歌
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橘の本に我を立て下枝取り ならむや君と問ひし子らはも