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剣大刀諸刃の利きに足踏みて
死なば死なむよ君によりては

歌の意味
剣大刀の両刃の鋭い刃に足を踏みつけて、死ぬなら死のう。あなたのためならば。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2498

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 あなたのためならば、剣の鋭い両刃に足を踏みつけて死んでもかまわないと、命をかけた恋の覚悟を述べた歌である。刃の上に足を踏むという鋭く具体的な像によって、激しい思いを表している。
 剣大刀に寄せた歌で、次歌でも「剣大刀」が詠まれ、刀に寄せる歌が二首並べられている。本歌は刀の刃そのものを、次歌は「名」にかかる枕詞として刀を用いており、同じ語を異なる働きで詠み分けている。
 作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。

 初句「剣大刀」は、剣や太刀をいう語である。枕詞として用いられることも多いが、ここでは二句の「諸刃」を言い起こし、刀そのものを描いている。
 二句「諸刃の利きに」は、両刃の鋭い刃に、の意である。「利き」は刃の鋭いことをいう。
 三句「足踏みて」は、足を踏みつけて、の意である。初句からここまでが、命を投げ出す覚悟を具体的な行為として描いている。
 四句「死なば死なむよ」は、死ぬなら死のう、の意である。同じ動詞を重ねて覚悟を強め、「よ」で言い切っている。ここで句切れとなる。
 結句「君によりては」は、あなたのためならば、あなたゆえならば、の意である。四句と倒置の関係にあり、命をかける理由を後から示して結んでいる。

つるぎたち:剣や太刀。「身に添ふ」「名」などにかかる枕詞ともなる
もろは:刀の両側にある刃
作者
柿本人麻呂歌集
出典
万葉集
前の歌
隼人の名に負ふ夜声のいちしろく 我が名は告りつ妻と頼ませ
次の歌
我妹子に恋ひしわたれば剣大刀 名の惜しけくも思ひかねつも