梓弓引きてゆるさずあらませば
かかる恋にはあはざらましを
- 歌の意味
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梓弓を引いて緩めないように、心を許さずにいたならば、こんな恋にはあわなかっただろうに。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2505
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
弓を引き絞って緩めないように、心を許さずにいたならば、このように苦しい恋にあうことはなかったのにと、相手に心を許したことを悔やむ歌である。求愛に応じて心を許した女性の立場で詠まれた歌とみられ、恋の苦しさをかみしめる思いが表れている。
梓弓に寄せた歌で、弓を引くことと、相手の求めに心を引かれることとを重ねている。「ませば…まし」の反実仮想を用いて、そうしなかった現実への嘆きを表している。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「梓弓」は、二句の「引き」にかかる枕詞である。梓の木で作った弓をいい、弓を引くことからかかる。
二句「引きてゆるさず」は、引いたまま緩めないで、の意である。弓を引き絞って緩めないことに、心を許さないことを重ねている。「引き」「ゆるす」は弓の縁語である。
三句「あらませば」は、もしそうであったならば、の意である。助動詞「まし」の未然形「ませ」に「ば」が付いた形で、結句の「まし」と呼応して反実仮想を表している。
四句「かかる恋には」は、このような恋には、の意である。「かかる」は今の苦しい恋を指し、係助詞「は」で取り立てている。
結句「あはざらましを」は、あわなかっただろうに、の意である。三句の「ませば」を受けた反実仮想の「まし」に詠嘆の「を」が付き、心を許したことへの悔いを込めて結んでいる。
あづさゆみ:梓の木で作った弓
ゆるす:引いた弓を緩める意と、心を許す意とを重ねる
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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解き衣の恋ひ乱れつつ浮き真砂 生きても我れはありわたるかも
- 次の歌
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言霊の八十の街に夕占問ふ 占まさに告る妹は相寄らむ