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言霊の八十の街に夕占問ふ
占まさに告る妹は相寄らむ

歌の意味
言霊の宿る、道の多く分かれる辻で夕占をすると、占いがはっきりと告げた。妹は私に寄り添うだろうと。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2506

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 言霊の力が宿るとされる辻に立って夕占をしたところ、妹は自分に心を寄せるだろうと、占いがはっきり告げたと喜ぶ歌である。恋の行方を占いに託した古代の人々の信仰と、よい占いを得た心の弾みが表れている。
 夕占という習俗に寄せた歌である。夕占は夕方に辻に立ち、行き交う人の言葉を聞いて吉凶を占うものであった。次歌の第二千五百七首も道行き占に妹に逢えると告げられたことを詠んでおり、占いに寄せる歌が二首並べられている。
 作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。

 初句「言霊の」は、言葉に宿る霊力の、の意である。言葉には現実を動かす力があると信じられており、占いが言葉によることを示している。
 二句「八十の街に」は、多くの道が分かれる辻に、の意である。「八十」は数の多いことをいい、「街」は道の分かれるところ、辻をいう。人の行き交う辻は占いの場とされた。
 三句「夕占問ふ」は、夕方の占いをする、の意である。夕方に辻に立ち、通りがかる人の言葉を聞いて吉凶を占う習俗である。
 四句「占まさに告る」は、占いがまさしく告げる、の意である。「まさに」は、はっきりと、確かに、の意で、占いの答えの確かさを強めている。ここで句切れとなる。
 結句「妹は相寄らむ」は、妹は私に寄り添うだろう、の意である。占いが告げた言葉の内容で、八音の字余りの句である。推量の助動詞「む」で、恋の成就への期待を込めて結んでいる。

ことだま:言葉に宿ると信じられた霊力
ちまた:道の分かれるところ、辻
ゆふけ:夕方に辻に立ち、通る人の言葉を聞いて吉凶を占うこと
うら:占い、占いの結果
作者
柿本人麻呂歌集
出典
万葉集
前の歌
梓弓引きてゆるさずあらませば かかる恋にはあはざらましを
次の歌
玉桙の道行き占に占なへば 妹に逢はむと我れに告りつも