古典和歌stream

玉桙の道行き占に占なへば
妹に逢はむと我れに告りつも

歌の意味
道行き占で占ってみると、妻に逢えるだろうと私に告げたことだ。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2507

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 道を行く人の言葉で吉凶を占う道行き占をしてみたところ、妻に逢えるだろうというお告げが出たと喜ぶ歌である。恋の行方を占いに託さずにはいられない心と、よいお告げを得た晴れやかな気持ちとが素直に表れている。
 詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」であり、本歌は占いに寄せて恋の思いを述べている。前歌は夕占を問うて妹が寄り添うだろうとのお告げを得た歌で、本歌も同じく辻の占いによい知らせを得た歌である。二首は占いを主題として並べられており、本歌が柿本人麻呂歌集の寄物陳思の歌の最後に置かれている。
 作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。

 初句「玉桙の」は「道」にかかる枕詞である。「玉桙」は美しい桙の意で、道の神をまつる柱を立てたことからかかるともいわれる。
 二句「道行き占に」の「道行き占」は、道で行き交う人の言葉を聞いて吉凶を判断する占いである。夕方の辻で行うことが多く、夕占とも呼ばれる。
 三句「占なへば」は、占ったところ、の意である。「占なへ」は動詞「占なふ」の已然形で、助詞「ば」が付いて確定条件を表している。
 四句「妹に逢はむと」は、妻に逢うだろう、の意である。助動詞「む」は推量で、助詞「と」が占いの告げた内容を引用している。
 結句「我れに告りつも」は、私に告げたことだ、の意である。完了の助動詞「つ」に詠嘆の助詞「も」が付き、よいお告げを得た喜びを込めて言い収めている。

たまほこ:美しい桙。「たまほこの」の形で「道」にかかる枕詞
みちゆきうら:道を行く人の言葉を聞いて吉凶を占うこと
うらなふ:占いをして吉凶を判断する
のる:告げる、言い聞かせる
作者
柿本人麻呂歌集
出典
万葉集
前の歌
言霊の八十の街に夕占問ふ 占まさに告る妹は相寄らむ
次の歌
すめろぎの神の御門を畏みと さもらふ時に逢へる君かも