鳴る神の少し響みて降らずとも
我は留まらむ妹し留めば
- 歌の意味
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雷が少し鳴り響いて、雨が降らなくても、私は留まろう。あなたが引き留めるならば。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2514
詞書は前の歌に続き「問答」
雨が降らなくても、あなたが引き留めてくれるなら私は留まろうと、前歌の女の願いに男が答えた歌である。雨という口実に頼らず、あなたの一言さえあればよいと応じるところに、相手を思う男の誠実さとやさしさが表れている。
前歌とは左注の「右二首」によって一組とされる問答の答えである。前歌の初句と二句をそのまま受けて「降らずとも」と続け、女の「雨も降らぬか」を打ち消すように答えている。前歌の「君を留めむ」と本歌の「妹し留めば」とが呼応し、問いと答えが一つの対をなしている。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「鳴る神の」は、雷が、の意である。前歌の初句をそのまま受け、問いの歌に答えていることをはっきり示している。
二句「少し響みて」は、少し鳴り響いて、の意である。前歌と同じ句を重ね、女の願った空模様を言い取っている。
三句「降らずとも」は、雨が降らなくても、の意である。接続助詞「とも」が逆接の仮定を表し、前歌の「雨も降らぬか」を受けて口実はいらないと答えている。
四句「我は留まらむ」は、私は留まろう、の意である。助動詞「む」は意志を表す。ここで四句切れとなり、条件を後に回す倒置の形をとっている。
結句「妹し留めば」は、あなたが引き留めるならば、の意である。副助詞「し」が「妹」を強め、未然形に「ば」が付いて仮定の条件を表している。前歌の結句「君を留めむ」と呼応する句である。
なるかみ:雷
とよむ:鳴り響く、響きわたる
いも:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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鳴る神の少し響みてさし曇り 雨も降らぬか君を留めむ
- 次の歌
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敷栲の枕響みて夜も寝ず 思ふ人には後も逢ふものを