- 歌の意味
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枕が人に物を言うだろうか、言いはしない。その枕には苔が生えてしまっている。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2516
詞書は前の歌に続き「問答」
枕が人に物を言うだろうか、その枕には苔が生えてしまっていると、前歌に答えた歌である。長く訪れのないまま使われずにいる枕に苔が生えたと大げさに言い、相手の言葉をやり返しながら、共寝の絶えた月日の長さを恨んでいる。
前歌とは左注の「右二首」によって一組とされる問答の答えである。前歌の「枕響みて」を受け、枕が音を立てるなど物を言うわけがないと切り返しており、同じ「敷栲の枕」をめぐって問いと答えが鮮やかに対をなしている。
左注には、ここまでの百四十九首が柿本朝臣人麻呂の歌集に出るとあり、本歌が巻第十一に収められた人麻呂歌集の歌の最後となる。
作者は未詳であり、左注によれば柿本人麻呂歌集に出る歌である。人麻呂歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が書き留めた他の人々の歌とが含まれるとされる。柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、三十六歌仙の一人である。
初句「敷栲の」は「枕」にかかる枕詞である。前歌の初句と同じ語で始め、問いの歌を受けていることを示している。
二句「枕は人に」は、枕は人に、の意である。係助詞「は」で枕を取り立て、前歌の「枕響みて」を受けている。
三句「言とへや」は、物を言うだろうか、言いはしない、の意である。「言とへ」は動詞「言とふ」の已然形で、助詞「や」と結んで反語を表す。ここで三句切れとなる。
四句「その枕には」は、その枕には、の意である。「枕」の語を重ねて、話題を自分の寝床の枕へと移している。
結句「苔生しにたり」は、苔が生えてしまっている、の意である。「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「たり」は存続を表し、訪れの絶えた久しさを誇張して言い表している。
しきたへ:寝床に敷く布。「しきたへの」の形で「枕」「袖」などにかかる枕詞
こととふ:物を言う、話しかける
こけむす:苔が生える。長い年月がたつさま
- 作者
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柿本人麻呂歌集
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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敷栲の枕響みて夜も寝ず 思ふ人には後も逢ふものを
- 次の歌
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たらちねの母に障らばいたづらに 汝も我れも事なるべしや