奥山の真木の板戸を押し開き
しゑや出で来ね後は何せむ
- 歌の意味
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奥山の真木で作った板戸を押し開いて、ええい、出て来ておくれ。後になってはどうしようもない。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2519
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
奥山の真木で作った板戸を押し開いて、思い切って出て来ておくれ、後になってはどうにもならない、と女の家の戸口で呼びかけた男の歌である。戸の内にいる女に今すぐの逢瀬を迫る、切迫したもどかしい気持ちが率直に詠まれている。
心の思いをそのまま述べる正述心緒の歌である。夜、女のもとを訪ねた男が戸の前で呼びかける場面は古代の妻問いの習わしを背景としており、板戸という具体的な物を描きながらも、主眼は「しゑや出で来ね」という直接の呼びかけにある。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「奥山の」は、奥深い山の、の意である。良い木材を産する山を言い、次の「真木」の良さを示している。
二句「真木の板戸を」は、真木で作った板戸を、の意である。「真木」は杉や檜など良材となる木の総称で、しっかりと閉ざされた女の家の戸を描いている。
三句「押し開き」は、押し開いて、の意である。戸を開けて出て来るよう、女の動作を具体的に求めている。
四句「しゑや出で来ね」は、ええい、出て来ておくれ、の意である。「しゑや」はためらいを振り切る感動詞で、「ね」は願望の終助詞である。ここで四句切れとなる。
結句「後は何せむ」は、後になってはどうしようもない、の意である。「何せむ」は、何になろうか、の反語で、今でなければ意味がないという切迫した思いで結んでいる。
まき:杉や檜など良材となる木の総称
いたど:板で作った戸
いでく:出て来る
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我妹子が我れを送ると白栲の 袖漬つまでに泣きし思ほゆ
- 次の歌
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刈り薦の一重を敷きてさ寝れども 君とし寝れば寒けくもなし