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刈り薦の一重を敷きてさ寝れども
君とし寝れば寒けくもなし

歌の意味
刈り取った薦をただ一重敷いただけで寝るけれども、あなたと寝るので寒くもない。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2520

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 刈り取った薦をただ一重敷いただけの粗末な寝床で寝るけれども、あなたと共に寝るので少しも寒くはないと、共寝の喜びを詠んだ女の歌である。貧しい寝床の寒さと、恋人のぬくもりとを対比させ、満ち足りた思いを素朴に表している。
 心の思いをそのまま述べる正述心緒の歌で、薦の寝床という暮らしの具体を詠みながら、主題は共寝の幸福にある。前歌が戸の外から逢瀬を求める男の歌であるのに対し、本歌はすでに共に寝る女の満ち足りた心を詠んでおり、逢う前と逢った後との対照をなしている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「刈り薦の」は、刈り取った薦の、の意である。薦は水辺に生える真菰のことで、編んで敷物とした。
 二句「一重を敷きて」は、ただ一重を敷いて、の意である。一枚しか敷かない寝床の粗末さを示している。
 三句「さ寝れども」は、寝るけれども、の意である。「さ」は語調を整える接頭語で、接続助詞「ども」が逆接の確定条件を表している。
 四句「君とし寝れば」は、あなたと寝るので、の意である。副助詞「し」が「君と」を強め、ほかならぬあなたと寝るからこそという思いを表している。
 結句「寒けくもなし」は、寒くもない、の意である。「寒けく」は形容詞「寒し」のク語法で、寒いことの意となり、助詞「も」と「なし」で打ち消して満ち足りた心で結んでいる。

かりこも:刈り取った真菰
こも:真菰。水辺に生える草で、編んで敷物とした
さぬ:寝る。「さ」は接頭語
出典
万葉集
前の歌
奥山の真木の板戸を押し開き しゑや出で来ね後は何せむ
次の歌
かきつはた丹つらふ君をいささめに 思ひ出でつつ嘆きつるかも