かきつはた丹つらふ君をいささめに
思ひ出でつつ嘆きつるかも
- 歌の意味
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かきつばたの花のように紅く照り映える美しいあなたを、ふと思い出しては嘆いてしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2521
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
かきつばたの花のように照り映える美しいあなたを、ふと思い出しては嘆いてしまったと詠んだ歌である。何気なく心に浮かんだ面影がそのまま深い嘆きへと変わっていくさまに、恋の思いの強さが表れている。
心の思いをそのまま述べる正述心緒の歌で、相手の美しさを「かきつはた丹つらふ」と花の色に喩えて言い起こしている。本巻の第二千五百二十三首も「さ丹つらふ」で始まっており、紅に照り映える色を表す同じ語が近くに置かれている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「かきつはた」は「丹つらふ」にかかる枕詞である。かきつばたの花の色の美しさから、色鮮やかに照り映える意の語へとかかる。
二句「丹つらふ君を」は、紅く照り映える美しいあなたを、の意である。「丹つらふ」は赤い色が照り映える意で、血色のよい若々しい美しさをいう。
三句「いささめに」は、ふと、かりそめに、の意である。何かの折に何気なく思い出すさまを表している。
四句「思ひ出でつつ」は、思い出しては、の意である。接続助詞「つつ」が反復を表し、思い出すたびに嘆くことを示している。
結句「嘆きつるかも」は、嘆いてしまったことよ、の意である。完了の助動詞「つ」の連体形「つる」に終助詞「かも」が付き、自らの嘆きを詠嘆を込めて振り返っている。
かきつはた:植物の杜若。花の色の美しさから「につらふ」などにかかる枕詞
につらふ:赤い色が照り映える、血色よく美しい
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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刈り薦の一重を敷きてさ寝れども 君とし寝れば寒けくもなし
- 次の歌
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恨めしと思ふさなはにありしかば 外のみぞ見し心は思へど