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恨めしと思ふさなはにありしかば
外のみぞ見し心は思へど

歌の意味
恨めしいと思っているさなかであったので、よそながら見ていただけだった。心では思っていたけれど。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2522

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 相手を恨めしく思っていたさなかであったので、よそながら見ているだけだった、心では思っていたけれども、と詠んだ歌である。恨む気持ちから素直に近づけなかった自分を振り返り、それでも心の内では思い続けていたことを打ち明けている。
 心の思いをそのまま述べる正述心緒の歌で、外に表した態度と内に抱いた思いとの食い違いを主題とする。次歌も、顔色には出さないが心の内では深く思っていると詠んでおり、表と内との隔たりを詠む二首が並べられている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「恨めしと」は、恨めしいと、の意である。相手の態度をつらく思う気持ちを、助詞「と」で引用している。
 二句「思ふさなはに」は、思っているさなかに、の意である。「さなは」は語義が明らかでないが、ちょうどその時、その最中の意に解されている。
 三句「ありしかば」は、あったので、の意である。過去の助動詞「き」の已然形「しか」に助詞「ば」が付き、確定条件を表している。
 四句「外のみぞ見し」は、よそながら見ていただけだった、の意である。係助詞「ぞ」を受けて過去の助動詞「き」の連体形「し」で結ぶ係り結びである。ここで四句切れとなり、結句と倒置の関係にある。
 結句「心は思へど」は、心では思っていたけれど、の意である。接続助詞「ど」が逆接を表し、倒置によって内なる思いを最後に打ち明けている。

さなは:語義未詳。ちょうどその時、その最中の意に解される
よそ:関わりのない離れた所。「よそに見る」で遠くから関わりなく見る
出典
万葉集
前の歌
かきつはた丹つらふ君をいささめに 思ひ出でつつ嘆きつるかも
次の歌
さ丹つらふ色には出でず少なくも 心のうちに我が思はなくに