さ丹つらふ色には出でず少なくも
心のうちに我が思はなくに
- 歌の意味
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顔色には出さないけれども、心の中で私が少しばかり思っているのではないのに。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2523
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
顔色には出さないけれども、心の中では少しばかり思っているのではない、深く思っているのにと訴えた歌である。表に出さずに恋を忍ぶ者の、気づいてもらえないもどかしさがにじんでいる。
心の思いをそのまま述べる正述心緒の歌で、前歌の「心は思へど」と同じく、外には表さない内なる思いを詠んでいる。また初句の「さ丹つらふ」は本巻の第二千五百二十一首の「丹つらふ」と同じ語で、紅に照り映える色が、ここでは顔に表れる恋の色として用いられている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「さ丹つらふ」は「色」にかかる枕詞である。「さ」は接頭語で、紅に照り映える意から顔色の「色」へとかかる。
二句「色には出でず」は、顔色には出さない、の意である。係助詞「は」で取り立て、打消の助動詞「ず」で言い切っている。ここで二句切れとなる。
三句「少なくも」は、少しばかりでも、の意である。結句の打消と呼応し、並ひととおりでなく深く思うことを表している。
四句「心のうちに」は、心の中で、の意である。顔色という外と対比して、思いの在りかを示している。
結句「我が思はなくに」は、私が思っているのではないのに、の意である。「なくに」は打消の助動詞「ず」のク語法に助詞「に」が付いた形で、詠嘆を込めて言い終えている。
につらふ:赤い色が照り映える、血色よく美しい
いろ:顔色、表情
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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恨めしと思ふさなはにありしかば 外のみぞ見し心は思へど
- 次の歌
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我が背子に直に逢はばこそ名は立ため 言の通ひに何かそこゆゑ