我が背子に直に逢はばこそ名は立ため
言の通ひに何かそこゆゑ
- 歌の意味
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あなたにじかに逢ったのならば噂も立つだろうが、言葉を通わせているだけなのに、どうしてそのために噂が立つのか。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2524
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
あなたにじかに逢ったのなら噂が立つのも仕方ないが、言葉を交わしているだけなのに、どうしてそのことで噂になるのかと、人の口をいぶかり嘆く女の歌である。まだ逢ってもいないのに立つ浮き名への不満と、逢えないもどかしさとが込められている。
心の思いをそのまま述べる正述心緒の歌である。恋が人に知られて評判が立つことを恐れる思いは、万葉集の恋の歌に繰り返し詠まれる主題であり、本歌は逢うことと便りを交わすこととを区別して、理不尽な噂に抗議している。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「我が背子に」は、私の夫に、の意である。「背子」は女性が夫や恋人を親しんで呼ぶ語で、女の歌であることを示している。
二句「直に逢はばこそ」は、じかに逢ったならばこそ、の意である。「直に」は人を介さず直接にの意で、係助詞「こそ」が仮定の条件を強く取り立てている。
三句「名は立ため」は、噂も立つだろう、の意である。「名」は評判、うわさのことで、係助詞「こそ」を受けて推量の助動詞「む」の已然形「め」で結ぶ係り結びとなり、逆接の意を含んで下へ続いている。ここで三句切れとなる。
四句「言の通ひに」は、言葉のやりとりで、の意である。直接逢うことと対比して、便りを交わすだけの間柄であることを示している。
結句「何かそこゆゑ」は、どうしてそのために、の意である。「何か」は疑問を表し、下に「名の立つ」などの語が省かれた言いさしの形で、いぶかる気持ちを強めている。
せこ:女性が夫や恋人を親しんで呼ぶ語
な:評判、うわさ。「名が立つ」で浮き名が広まる
ことのかよひ:言葉のやりとり、便りを通わせること
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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さ丹つらふ色には出でず少なくも 心のうちに我が思はなくに
- 次の歌
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ねもころに片思ひすれかこのころの 我が心どの生けるともなき